アメリカ/1969年/カラー/111分

脚本：Ａ・マーチン・ツウェイバック

監督：フレッド・コウ

出演：パティ・デューク/ジェームス・ファィーノ

アル・パチーノ

ナタリーへ

ナタリー！

今、卒業式たけなわよ。

このシーズンになると、私はきっと貴女のことを思い出すの。

いつもバイクに乗って元気そうな貴女だった。

でも、自分の容姿には劣等感を持ちっぱなしだったよね。

高校の卒業パーティが近づくにつれて、貴女がどんな思いをして日々を過ごしていたか・・・

「ナタリー！お相手はいるの？」

「いるわ」なんって、とっさに答えてしまった貴女だけれど、誰も誘ってはくれないことを、あなた自身が一番知っていたはずよね。

パーティーに間に合わすための自作自演の手紙に、私は涙が止まらなかった。

彼が外国船に乗っているなんって言って、貴女は無理しちゃったけれど、見え見えも良いところ。

私には、貴女の思春期の切ない憧れが痛いほどに感じられたわ。

お世辞にもうまいと言えないドレスアップで埠頭に立つなんって、ちょっと滑稽だったけれど、今思えば、それが古きよき時代の青春と言うものよね。

大学における貴女の学生運動のリタイアも私には懐かしい。

私の青春も安保闘争の華やかな時代だった。

今の若い人には想像もできないほどの大衆闘争が、この日本でも繰り広げられていたのよ。

そんななか私はと言えば、覚えたてのダンスでダンスパーティに興じていた。

当時、ノンポリ学生だった私には、条約の持つ重大さはわかっていなかったけれども、この闘争で東大生樺美智子さんが尊い命を落としたことから、初めて、ことの重みを感じたわけです。

安保は改定されて、国民的な運動であったわけだけれど、尊い命を落としてまでの安保条約反対運動とは？

あれは一体なんだったんでしょうか・・この疑問が、私の心の片隅に未だ活きつづけているんです。

でもね、グリニッジ・ビレッジの一人暮らしは、貴女を成長させたわよね。

愛されるばかりが人生じゃないのよ。

人間は外見じゃないということ、内面的なものにこそ、真の美しさがあるということを悟った貴女は、輝いていてよ。